LTOテープライブラリ・オートローダーを使う(Windows)

重要なデータのバックアップのため、LTOテープライブラリの使用を考えてみます。

LTOメディアをロボットが管理し、自動でLTOドライブに出し入れしてくれる装置のことです。

バーコードリーダーも搭載されていて、LTOメディアをIDで管理します。

テープライブラリの中でも最低限の構成(1ドライブ)のものは、オートローダーと言うこともあります。

どちらも同じ役割の装置で言い方が違うだけです。

今回は Windows Server 2019 上でLTOテープライブラリを使用してみます。

 

ハードウェアの選定

2021年現在、主に中古で出回るのはLTO5~LTO6が多いです。

世代 記憶容量 圧縮時最大
LTO Ultrium 4 800GB 1.6TB
LTO Ultrium 5 1.5TB 3.0TB
LTO Ultrium 6 2.5TB 6.25TB
LTO Ultrium 7 6.0TB 15.0TB

 

基本的にどの世代のLTOドライブも1世代前のメディアは読み書き出来るように出来ています。

LTO7までのドライブであれば、2世代前のメディアの読み取りも可能になっているようです。

圧縮を有効にするとハードウェア側で圧縮処理が行われますが、書き込むファイル内容によって圧縮率が変わります。

そのため、圧縮時の容量でテープの本数を計算してはいけません。

基本的に圧縮の設定はソフトウェアから行います。

 

LTO5以降であれば通常の使用方法以外にLTFSが使用できます。

LTFSを使用すると特別なバックアップソフト必要無しにファイルを入れることが可能です。

 

テープライブラリのドライブに搭載されるインターフェースの種類は主にファイバーチャネルかMini SAS(SFF-8088)です。

古いものだとSCSIですが、今更選択する理由はないと思います。

 

SASカードの選定

ファイバーチャネルではドライブもカードもSASよりかは安く入手出来ますが、SASエンクロージャーを所有してるので同時に使えるようにSASにします。

今回は手元にあった LSI SAS 9201-16e / LSI SAS 9200-16e を使用します。

Windowsの標準ドライバで使えることと、Mini SAS(SFF-8088)が4ポートあるので複数機器を接続できるので便利です。

ヤフオクやeBay等で調達できます。

 

SASファンアウトケーブル

そのままSASケーブル(SFF-8088 to SFF-8088)にて接続しても良いのですが、1本のケーブル中には4ポート分の信号が通っています。

LTOドライブでは1ポートしか使用しないため、SASカードのポート1つに4台までのLTOドライブを接続することが出来ます。

例えば HP(HPE) の場合、以下のようなSASファンアウトケーブルがあります。

HPE StoreEver 2m External Mini-SAS to 4x1 Mini-SASケーブル

HPE StoreEver 4m External Mini-SAS to 4x1 Mini-SASケーブル

自作している方もいるようです。

 

LTOテープライブラリの選定

ファームウェアの公開状況

DELL / NEC はWebから最新ファームウェアのダウンロードが可能のようです。

HP(HPE) / IBM / 富士通 はWeb上からのダウンロードには保守契約が必要。

日立 はWeb上には公開されてないようです。ただ見た目からしてHPEのOEMっぽいですね。

 

HP(HPE)のテープライブラリ、オートローダー

HPEであればヤフオク等に定期的に出てきます。

2Uサイズの「HPE StoreEver MSL2024 テープライブラリ」をオススメしておきます。

「HPE StoreEver 1/8 G2テープオートローダー」は1Uでコンパクトですが、ファンが若干うるさくなるのとテープが入る本数が少なくなります。

MSL2024では24本のLTOテープを入れられることに対して、1/8 G2では8本しか入りません。

 

搬送用ロック

搬送中に内部でロボット機構が移動しないように搬送用ロックがあります。

中古で購入する際は、搬送用ロックを差し込んだ状態で送ってもらえるように手配するとダメージが少なく済みます。

もちろん、電源を入れる際には必ず外します。

また、LTOドライブ側を下にして立てたのか、LTOドライブのハンドル・ファン部分が内部方向にめり込む形で歪んでいたという経験もありました。

天地無用を徹底することも伝えると良いかもしれません。

 

LTOバーコードラベル

LTOテープをテープライブラリで管理する際にテープ判別のためにバーコードラベルを貼る必要があります。

このように規格で決まっています。

新品でLTOテープを購入した場合ラベルが無い状態になっていますので、バーコードラベルを貼ります。

HPEからバーコードラベルのパックが販売されており、こちらを購入すると手っ取り早いです。

ラベルにしては高価なので自分で印刷するという手もあります。

 

WORMカートリッジ

データを一度しか書き込むことが出来ないWORM(Write Once Read Many)タイプのカートリッジも存在しています。

定期的に上書きしてバックアップを取りたい場合は、WORMカートリッジを使用することが出来ませんので、購入の際は注意しましょう。

 

ドライバーのインストール

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Windows Server 2019にて接続した「HPE StoreEver 1/8 G2テープオートローダー」の例です。

LTOドライブ自体のドライバはWindowsでは自動で当たっているようです。

しかし、テープライブラリ側のドライバは自動では当たらないので、上記ドライバをインストールします。

 

管理ツール

HPE Library and Tape Tools

HP StorageWorks テープストレージ製品 - HP StorageWorks Library and Tape Tools (L&TT) のインストール方法 (Windows)

HPE StoreEver Command View for Tape Libraries

 

LTOテープライブラリの使い方

テープライブラリの肝はメールスロットの存在と、動作モードの種類というところです。

 

メールスロット

LTOテープライブラリでは複数のテープをバーコードで管理するためバーコードリーダーを搭載しています。

ここで問題になるのがLTOテープの出し入れ時にマガジン全体にバーコードスキャンが走ることです。

例えば「HPE StoreEver 1/8 G2テープオートローダー」であれば左スロットマガジン、右スロットマガジン共に4本づつ入ります。

この数であればそこまで問題にならないかもしれません。

しかし、「HPE StoreEver MSL2024 テープライブラリ」であれば左スロットマガジン、右スロットマガジン共に12本づつとなります。

1本だけのLTOテープを入れた場合、入れた本数に関わらずマガジンの全て12本のバーコードスキャンが走ってしまい、待たされることになってしまいます。

そのためメールスロットという特殊なスロットが存在しています。

マガジンを収めたまま開くスロットで、テープライブラリの大きさによっても違いますが、最低限の数量をやりとり出来るスロットになっています。

例えば、クリーニングをするときだけマガジンを出し入れせずに、メールスロット経由でクリーニングテープを入れる、などが可能になります。

基本的にテープライブラリ自体に設定項目が存在します。

 

テープライブラリの動作モード

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例として「HPE StoreEver 1/8 G2テープオートローダー」の設定画面です。

オートローダーモードとして、「ランダム」「シーケンシャル」「自動」が定義されています。

また、「オートロード」と「ループ」というチェックボックスも存在します。

 

ランダムモード

テープライブラリが自動でテープをロード、アンロードをしないモードです。

テープをロード、アンロードするには、バックアップソフトからのコマンドが必要です。

テープライブラリに対応しているバックアップソフトを使用する場合のモードです。

 

シーケンシャルモード

テープライブラリが自動でテープをロード、アンロードするモードです。

オートローダーを認識しないバックアップソフトから使用する場合に利用します。

現在のテープが一杯になって書き込み出来なくなった場合、次の大きな番号のバーコードラベルが貼ってあるテープを自動でロードします。

 

自動モード

特定のコマンドを受け取った場合に、シーケンシャルモードからランダムモードに切り替わるモードです。

デフォルト設定ではこのモードになっているため、使用するバックアップソフトの種類によって自動で変わります。

うまく使用できない場合は、設定を変更してみると良いと思います。

 

オートロード設定

シーケンシャルモードのみ使用可能な設定で、有効になっている場合は、電源投入時に自動で最小の番号のテープをロードします。

 

ループ設定

シーケンシャルモードのみ使用可能な設定で、有効になっている場合は最後の番号のスロットのテープがアンロードされたあとに、一番小さい番号のテープがロードされます。

ループ状態でエンドレス記録されるため、最初のテープ内容は上書きされてしまいます。

テープの領域全てを活用するために、このモードを使用する際は、保存するべきデータが上書きされないように十分な量のテープを準備しましょう。

 

クリーニングテープの扱い

LTOにはクリーニングテープが存在しています。

世代関係無しに使用することが出来ます。

使用するバックアップソフトにてLTOドライブ単体でしか使用できない場合は、テープライブラリの設定で自動クリーニングを有効にすると良いかもしれません。

メールスロットを有効にして、テープライブラリの本体操作で手動でクリーニングを行っても良いと思います。

きちんとバーコードを取り付けている場合は、テープライブラリはクリーニングテープを認識しますので、どのスロットに入れておいても大丈夫と思われます。

 

LTOドライブ単体に対応したバックアップソフト

LTOドライブ単体のみ認識で、オートローダーの管理には対応しないソフトウェアです。

 

BackupAssist Classic

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BackupAssist Classic 体験版にてLTOドライブ単体が使用可能。

テープライブラリ・オートローダーは対応していない模様。

LTOドライブのデータ圧縮に関する設定は不可能。

設定のアプリからアンインストール出来ず、スタートメニュー内から行う必要があった。

なお、BackupAssist ER ではテープの選択肢が出なかった。

価格は USD 279 ~

 

EaseUS Todo Backup Enterprise

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EaseUS Todo Backup Enterprise 体験版にてLTOドライブ単体が使用可能。

テープライブラリ・オートローダーは対応していない模様。

LTOドライブのデータ圧縮に関する設定は不可能。

安価ではあるが中国製のソフトウェアということが若干気になる。

価格は USD 39 ~(Windows Serverでは USD 199 ~)

 

Iperius Backup Tape

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Iperius Backup Tape 体験版にてLTOドライブ単体が使用可能。

テープライブラリ・オートローダーは対応していない模様。

LTOドライブのデータ圧縮に関する設定は可能。

価格は EUR 149 ~

 

Uranium Backup Pro Tape

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Uranium Backup Pro Tape 体験版にてLTOドライブ単体が使用可能。

テープライブラリ・オートローダーは対応していない模様。

LTOドライブのデータ圧縮に関する設定は可能。

価格は EUR 150 ~

 

LTOテープライブラリに対応したバックアップソフト

SASカードとの相性問題?が多い印象。

 

Acronis Cyber Backup

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Acronis Cyber Backup 体験版にてLTOテープライブラリが使用可能。

操作インターフェースはブラウザ。

LTOドライブのデータ圧縮に関する設定は不可能? GUI中での設定は見つけられなかった。

サブスクリプションだけということが若干気になる。

相性問題か、手持ちのLSI SAS 9200ではバックアップ書き込み動作がうまく動かなかった。消去は動いた。

価格は 年間7500円 ~(Serverでは 年間56000円 ~)

 

Archiware P5

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Archiware P5 体験版にてLTOテープライブラリが使用可能。

操作インターフェースはブラウザ。

LTOドライブのデータ圧縮、クリーニングに関する設定は可能。

LTFS対応!しかし、テープの容量でエディション分け、メディア数でも追加ライセンス(MMS)が必要?

手持ちのLSI SAS 9200で動作。

価格は USD 980 ~(8TB以上では USD 1960 ~)

 

Arcserve Backup

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Arcserve Backup 体験版にてLTOテープライブラリが使用可能。

LTOドライブのデータ圧縮、クリーニングに関する設定は可能。

インストール時にMicrosoft SQL Server 2014 Express Edition と Java Runtime Environment (JRE)が入れられる。

手持ちのLSI SAS 9200で動作。

価格は 150000円 ~(直接販売はしていないため代理店問い合わせ)

 

Barracuda Yosemite Server Backup

2017年9月で販売終了のため未確認。

 

Commvault Backup & Recovery

価格は問い合わせのみ?

 

Dell EMC NetWorker Data Protection

問い合わせのみのため未確認。

 

IBM Spectrum Protect

価格はIBM Spectrum Protect Plusの場合 毎月7107円 ~ (永久ライセンスは 236900円 ~)

IBM Spectrum Protectは問い合わせのみ?

 

Micro Focus Data Protector

価格は USD 1000 ~

 

Microsoft System Center Data Protection Manager

価格は USD 1323 ~(別途SQLサーバーが必要?)

 

NAKIVO Backup & Replication

安価、各種NASにも入ってる?デモ版あり。テープドライブ、オートローダーも対応っぽいけど インストール後の設定がよくわからない・・・ Webアプリぽい

 

NovaStor DataCenter

価格は 年間USD 2500 ~(データ量に応じて変動)

 

Quest NetVault

デモ版あり。見積もりのみ?

 

Retrospect Backup

数千円~数十万程度、デモ版あり デスクトップ版の差が不明(アドバンスドテープサポート) サーバー版はいい感じにテープを扱えそう デスクトップ版OSと自動判定?

 

SEP Sesam 未確認

デモ版はある

 

StorageCraft

問い合わせのみのため未確認。

 

Tina Time Navigator 未確認

デモ版あり。見積もりのみ?

 

Tolis BRU 未確認

10万以下っぽいけどオートローダー対応しているのか?デモ版あり。

 

Unitrends Free 未確認

無料版以外は問い合わせ? 無料版は1TBまでのvSphereかHyper-V用?

 

Veeam Backup & Replication Community Edition

Veeam Agent for Microsoft Windows FREEもある。

 

Veritas Backup Exec 未確認

https://www.veritas.com/protection/backup-exec/subscription

体験版あり。サブスクリプションならありな価格?

 

Veritas NetBackup

大規模バックアップ、小規模はBackup Exec。

問い合わせのみのため未確認。

 

Virtos SOS Backup 未確認

高くても20万円ほど? デモあり。 ポルトガル語?ブラジル語?しか情報がない

 

Xendata WorkStation 未確認

オートローダーは使えない???デモ版あり、10万円以下。

 

Z-DBackup

無料版もあり。安価。機能ごとにソフトが別れている?よくわからない 一応オートローダー認識するけど、バックアップジョブ中でテープの指定ができるわけではなさそう?

 

LTOに対応したバックアップソフト(現段階未確認)

Amanda

サーバーはLinuxでしか動かない?

 

Zmanda

Amandaの企業版。問い合わせのみ。デモ版も。 サーバーはLinuxのみ?

 

Bacula

Director(バックアップの実行を担当するシステム)はLinuxのみ。

 

Bareos

サーバーはLinuxのみ?

 

Backuppc

Linux用?WinでもうごくっぽいがPerlで作られてる→テープはtar?

 

Mondo Rescue

Linuxでしか動かない? ローカルのテープバックアップ用?

 

UrBackup

オープンソースのバックアップソフトウェア。Windowsもサポート テープはサポートされないが、テープ用アドオンがある(Ubuntuのみ?)