JEM-A HA端子
近年、スマートリモコンなどが普及し、エアコンなどの遠隔操作が可能になってきました。
しかし、リモコン動作ではエアコンが動作しているのか現在の状態を遠隔で得ることが出来ません。
実は、1987年に制定されたホームオートメーションを実現するための接続端子規格があります。
この規格はルームエアコン向けに誕生した規格で、後の改定によって、電気錠、電動シャッター、給湯器、暖房器具、照明器具等でも定められたようです。
そのため日本で販売されているエアコンにはその端子が搭載されていることが多いようです。
日本電機工業会(JEMA)にて定められる日本電機工業会規格(JEM)で規格番号 1427 にて公開されているもので、端子名は「HA端子(JEM-A)」と言います。
JEM 1427「HA端子(JEM-A)」中では、「HA端子(JEM-A)」と表記され、文中では「HA端子」と呼ばれています。
呼び名の定義としては「JEMA標準HA端子-A」のようです。
JEM 1461「HA端子(JEM-A)における接続線の延長端子」中では、「HA端子(JEM-A)」と表記され、文中では「JEM-A端子」と呼ばれています。
延長端子の呼び名の定義としては「JEM-A延長端子」のようで、先程のものと比較して、統一感の無い印象を受けます。
インターネット上で検索しても、HA端子、JEMA端子、JEM1427端子、JEM端子-Aと呼び名にブレがあるようです。
この記事中では「HA端子」と呼ぶことにします。
IFU(インターフェースユニット)
HA端子の接続先として信号絶縁のためのIFUが存在しています。
IFUまでの接続に関しては、1.9mのケーブルを使用すると定められていて、HA端子配線器具(IFU)が存在しています。
- WTF47204WK
- WTF47214WK
- WTF47204WK - 商品仕様書
- WRT4500
- WTJ7003
- WZ6895(WTF47214WKモデルチェンジ前?)
- HF-JA2-W
パナソニック製IFU「WTF47204WK」について
実際に入手しました。
1.9mのケーブルと、コスモワイドシリーズの枠が付いたIFU本体です。
接続ケーブルです。
JSTのXHコネクタ4ピンと、RJ11の6P4Cに見えます。
ケーブル自体には刻印が無く、シールドもありません。
2m程度の4芯の電話線を購入し、片方にXHコネクタを取り付ければ自作できそうな気がします。
しかし、実際には市販の電話線では銅箔糸導体を使用していて、被膜を剥くことができないものになっています。
IFU付属の接続ケーブルを分解してみた結果、被膜の変に伸びる感じがフッ素樹脂系ぽい?
導体は20本、0.1mm?程度で仕上げ外形が0.9mm程度。4芯、紙巻き。特にツイストされてないっぽい。
シースは結構厚め硬めでシリコーン系?仕上げ外形が4.2mm程度。マーキング無し。
「1対丸型FEP絶縁・シリコーンゴムシース補償導線」あたりが近いと思うが2芯。
RJ11コネクタでの圧着を考えるとAWG26~24程度の撚り線が望ましいところ。
細い4芯のケーブルは探してもなかなか見当たらず。
「KCTF 0.2SQ X 4C」「AT7124F/60」あたりが良いかもですね。他、VVC・VCTFあたりも良さそうです。
IFU本体の表と裏です。
裏面は端子台でのネジ止め接続になっています。
IFUを分解しました。
基板の表にはフォトカプラと電解コンデンサが見えます。
基板の裏面にはセラミックコンデンサと、トランジスタ、ダイオードの類が見えます。
HA端子ケーブルの製作
準備するもの
- XHコネクター ハウジング 4P XHP-4
- XHコネクター ハウジング用コンタクト SXH-001T-P0.6
- XHコネクタ用圧着工具
- RJ11/12 6P4C プラグコネクタ
- RJ11用圧着工具
- ケーブル(今回はKCTF 0.2SQ X 4C)
- ケーブルストリッパー
実際にケーブルを製作してみました。
パナソニックのIFU準拠のケーブルです。
RJコネクタに合うように皮膜を剥きます。
被膜を少し削っておかないとRJコネクタに入れるのは結構困難で、なにより圧着が難しいです。
被膜でかなり太いためにケーブルを留める部分の圧着がうまくいかずに何度も失敗しています。
パナソニックのIFU準拠にするためにRJコネクタを使用しましたが、自分で作る機器は他のコネクタを使用したほうが良いと思いました。
実際の接続インターフェース回路
制御を行うための制御信号線2本と、状態の取得をするためのモニタ信号線2本を使用します。
電圧は30V以下を想定。(動作テストでは5Vを使用するようです?)
必ずフォトカプラを挟み、絶縁する必要があります。
信号名 | 概要 | HA端子(XHコネクタ4ピン) | パナIFU機器側RJ11 |
---|---|---|---|
C1 | 制御信号(プラス) | 1 | 4(外部ケーブル青・内部青) |
C2 | 制御信号(マイナス) | 2 | 5(外部ケーブル白・内部茶) |
M1 | モニタ信号(プラス) | 3 | 3(外部ケーブル茶・内部白) |
M2 | モニタ信号(マイナス) | 4 | 2(外部ケーブル黒・内部黒) |
パナIFUの内部ケーブル色は一部入れ替わっててややこしいので参考にしないほうが良いと思われます。
RJコネクタのピン番号は検索すれば出てくると思います。
制御信号(C1, C2)
200~300msのパルスを送る必要があります。
続けてパルスを送る場合は間隔は200ms以上あける必要があります。
基本的には WTF47204WK - 商品仕様書 で紹介されている回路の通り、IFU内部では実装されています。
保護ダイオードと並列に0.4μF程度のパスコンが入っているようです。
モニタ信号(M1, M2)
制御信号のパルス入力から350ms以下で応答があります。
動作状態をスタティック信号で表す場合はステートが変化するだけですが、ダイナミック信号の場合もあるようです。
その場合は動作状態を20ms以下の1周期、オン時間1ms以上のパルス信号で通知されるようです。
(オン時間 / 1周期 は0.15以上の必要があるようです)
基本的には WTF47204WK - 商品仕様書 で紹介されている回路の通り、IFU内部では実装されています。
保護ダイオードと並列に0.4μF程度のパスコンが入っているようです。
また、ダーリントン接続されたNPNトランジスタ(DSC2001?)1つと、フォトカプラのエミッタ部分に電解コンデンサ(50V 33μF)1つが入っています。
マイコンとの接続回路
実際のエアコンの端子
エアコンを分解した様子を掲載します。
分解清掃の方法を調べてみると大体わかるかと思われます。
プラスドライバーがあれば分解できます。
以下、メーカー50音順、W数降順での私が行った分解方法のメモです。
東芝 RAS-J401M(W) 14畳クラス 4.0kW冷房 2022年製
分解方法は、最初にコンセントを抜き、前面パネル、エアフィルター、上下風向ルーバーを外しておきます。
室内機本体カバーの上部3ヶ所ツメ、前面2ヶ所ネジ止め、ルーバー下部2ヶ所ツメを外します。
本体を落とさないように注意しながら本体カバーだけを手前に引っ張ります。接続コネクタ注意。
外れたら右側に制御基板が入っているので、配線カバー類を外します。
本体カバー側の基板との接続コネクタあり注意。カバー内側に配線図あり。
制御基板部分には赤色のHA端子があるようです。
ケーブルを接続して元に戻す。
東芝 RAS-281E(W) 10畳クラス 2.8kW冷房 2013年製
分解方法は、最初にコンセントを抜き、前面パネル、エアフィルター、上下風向ルーバーを外しておきます。
室内機本体カバーの上部3ヶ所ツメ、前面2ヶ所ネジ止め、ルーバー下部2ヶ所ツメを外します。
本体を落とさないように注意しながら本体カバーだけを手前に引っ張ります。
外れたら右側に制御基板が入っているので、配線カバー類を外します。
HA端子のパターンはあるのにコネクタ(と周辺部品?)が未実装。
接続できず。残念!
パナソニック CS-259TB-W 8畳クラス 2.5kW冷房 2009年製
分解方法は、最初にコンセントを抜き、前面パネル、エアフィルター、上下左右風向ルーバーを外しておきます。
室内機本体カバーの上部3ヶ所ツメ、ルーバー下部2ヶ所隠しネジ止め、ルーバー下部2ヶ所ツメを外します。
本体を落とさないように注意しながら本体カバーだけを手前に引っ張ります。
外れたら右側に制御基板が入っているので、カバーを外します。
HA端子です。ケーブルはVVFと同様に裏にまわします。
パナソニック CS-228CF-W 6畳クラス 2.2kW冷房 2018年製
分解方法は、最初にコンセントを抜き、前面パネル、エアフィルター、上下風向ルーバーを外しておきます。
室内機本体カバーの上部3ヶ所ツメ、前面2ヶ所ネジ止め、ルーバー下部2ヶ所隠しネジ止め、ルーバー下部2ヶ所ツメを外します。
本体を落とさないように注意しながら本体カバーだけを手前に引っ張ります。
外れたら右側に制御基板が入っているので、カバーを外します。
CN-NETと書かれたコネクタの奥にあるのがHA端子です。
日立 RAS-AJ22N(W) 6畳クラス 2.2kW冷房 2023年製
メーカーサイトにて回路図を見ると、室内基板のテスト端子CN6に別売のHA接続コードSP-HAC1を差し込む必要があるとの表記。
接続コード詳細については後述。
分解方法は、最初にコンセントを抜き、前面パネル、エアフィルター、上下風向ルーバーを外しておきます。
室内機本体カバーの上部3ヶ所ツメ、前面2ヶ所ネジ止め+配線カバー(ネジ止め)、ルーバー下部2ヶ所ツメを外します。
本体を落とさないように注意しながら本体カバーだけを手前に引っ張ります。
外れたら右側に制御基板が入っているので、配線カバー類を外します。
接続コードは指示通り、電源ケーブルと結束バンドで固定しておきます。
日立 HA接続コード SP-HAC1
ZHコネクタ11ピン(ZHR-11)とXHコネクタ4ピン(XHP-4)、加えてXH中継コネクタ(B4B-XH-TW (LF)(SN))が付いたケーブルに見える。
中継コネクタは反転されていないため、接続時に1番ピンと4番ピンが接続される反転の結線であることに注意。
ケーブルはAWG26(1061 AWM LF)、コネクタ間のケーブル長さ150mm。
フェライトコア(ZCAT1325-0530A)がXHコネクタ側に付いている。
ZH6番ピンからXH3番ピン、ZH7番ピンからXH1番ピン、ZH11番ピンから途中で2分岐されXH2番ピンと4番ピンにつながっている。
ZHコネクタは6, 7, 11番ピン以外は未接続。(ピン番号はハウジングの番号、XH側は中継が挟まるので結果反転されるはず)
富士通ゼネラル AS-J25D-W 8畳クラス 2.5kW冷房 2014年製
分解方法は、最初にコンセントを抜き、前面パネル、エアフィルター、上下風向ルーバーを外しておきます。
室内機本体カバーの上部3ヶ所ツメ、前面3ヶ所ネジ止め、配線カバー1ヶ所隠しネジ止め、ルーバー下部3ヶ所ツメを外します。
本体を落とさないように注意しながら本体カバーだけを手前に引っ張ります。
外れたら右側に制御基板が入っているので、ネジを外しカバーを外します。
いくつかのコネクタが未実装、CN6(テスト用端子?)の5ピンのコネクタしかついていないようで、HA端子は無さそうです。
カバー内に貼ってあった配線図にもCN6の存在しか書かれていないため、この機種では残念ながら非対応のようです。
(HAアダプターも対応するものは無いようです。)