DRSSTC設計法(電源周り)
DRSSTCは半導体で回路を駆動させるタイプのテスラコイルのため、半導体から扱いやすいDC(直流)の電源が必要になります。
電源の基本
DRSSTCを動作させるための電源について基本は商用電源になるでしょう。
皆さんの家のコンセントにはAC(交流)の100Vが来ています。
他にも発電機やバッテリーの選択肢もあります。
基本的にDCからACへの変換にはインバータが必要になるため難しく、ACからDCへの変換は楽にできるでしょう。
DRSSTCではDC(直流)の電源を使用するため、もととなる電源はACでもDCでも対応できます。
商用電源から電気を取る
実験段階ではスライダックを使用して電圧を可変させることが出来るようになっていると便利だと思います。
間にヒューズやブレーカーなど保護素子は必ず挟むようにしておきましょう。
一般家庭は単相3線式という電気の契約が多いので、実は自宅でも200Vを取れることが多いです。
配電盤が上下2列に分かれているのはそのためで、中性線に対して100Vの電圧をかけた電圧線2本の合計3本で電気を送る方法です。
電圧線同士の電圧は200Vとなっているため、エアコンのコンセントで200Vに変更したりすることが可能になっています。
配電盤に空きスペースがあればブレーカーを追加して、200Vを取ることが出来ると思いますし、送り端子台があればそこから200Vを取ることが出来ます。
しかし、この場合は電気配線を直接触るため、第二種電気工事士の資格が必要になります。
IHヒーター向けやエアコン向けで、200Vコンセントが存在していれば、合うプラグを調達するだけで200Vを取ることが出来ます。
もちろん、そこまでの電力を必要としないのであれば、100Vコンセントで良いとは思います。
(どのぐらいの出力にするかにもよりますが、経験上、100Vコンセントでは1m程度の放電が限界です。それ以上になると20Aブレーカーが落ちます)
発電機から電気を取る
私は電気的なノイズの影響を嫌って発電機を使うことが多いです。
(イベント会場等で他者に迷惑をかけるのはもってのほかで、機器を誤動作・故障させたくありません)
数kWクラスの小型の発電機であればあまり気にしなくて良いですが、大型の発電機になると三相出力が多いです。
この場合、三相の相間のバランスが崩れると発電機自体に負担がかかり故障の原因になってしまいます。
そのため三相発電機に対しては、三相で受けられるタイプを製作し、三相で電気を使用するか、補助出力の単相を使用しましょう。
単相3線出力の発電機の場合も同様にバランスが重要になるので、電圧線同士で電源を取り、単相200Vで動かすのが良いと思います。
バッテリーから電気を取る
バッテリーから電源を取ることも出来ます。
その場合は、電動工具用のバッテリーが適しているかもしれません。
結構な電流を流すことができます。
参考:
小規模であれば、USB PD対応のバッテリーとトリガーケーブルを使用してDC 20Vなどを取り出してみるのも良いかもしれません。
制御ロジック回路の電源
DC 24V ないし 15V を推奨。
これはドライバ回路にもよりますが、基本は24Vで考えておくと、各種制御機器が使用できて良いです。
工場などで動作する装置は、DCでは24Vを基準として動くものが多いため、24Vに対応する部品も多く出回っています。
スイッチング電源モジュールを使用すると100V~200Vの範囲で電源を入力することが出来るため、電圧を気にしないで使えるものが作れます。
規模にもよりますが、50W以上の電源を使用しておくと安心です。
スイッチング電源は種類によって、100V/200V対応が違うので入力電圧範囲の確認を忘れずに。
電源コネクタの種類
一般的なコンセント(100V 15A)以外にこのようなものがあります。
スタジオ等では規模にもよりますが、単相200Vで電源を取るほうが単相3線式の相間バランスを気にしなくて良いので、基本は単相200Vが良いと思われます。
日本でよく使われるのは、C型コンセントとカムロックだと思われますが、もともとスタジオ想定では無いところでは通常の配電盤しか無いです。
そのため、端子台接続もできるようになっていると、様々な環境に対応できて良いと思われます。
端子台接続
東京映像美術株式会社にて体育館スタジオでのNHKドラマ撮影時の画像。
まともな電源コネクタが無かったため、単相3線式の配電盤から今回必要だった100Vを取り出しました。
端子台のネジ径にあわせて接続できるように、各種丸型圧着端子と圧着工具を持ち歩くと良いかもしれません。
舞台照明用 C型コンセント
主にステージやスタジオの照明機器に使われる「C型」と呼ばれるコネクタが存在します。
ややこしい話になるのですが、このコネクタは以前まで100V / 200V共用で使用されていました。
その後、JATET規格が制定されて、100Vのみでの使用と決められます。
現在は100V定格までのコネクタしか製造されていませんが、スタジオによって100Vの場合も200Vの場合もあります。
実際にスタジオに持っていって使用する場合、要注意です。
アマナ海岸スタジオとTBSスタジオの配電盤の画像。
画像の通り、アマナ海岸スタジオでは100Vと200Vの接続口があります。
東映東京撮影所では後述するカムロックからC型100A 2口とC型60A 3口への変換タップがありました。
カムロックの接続次第で、100Vでも200Vでも対応できるようです。
また持ち運び用のコンセント盤もありました。
舞台照明用 D型コンセント
C型コンセントが100V専用となり、200V用の舞台照明コンセントとして用意されたのがD型コネクタになります。
まだ普及していないのか、私はまだスタジオで見たことがありません。
20Aしか存在していないのも残念な点です。
C型コンセントでは東芝ライテックのみになりますが、100A仕様があります。
つまり、100V * 100A = 10kWの電力を扱えるコネクタが存在するのに対して、D型コンセントでは200V * 20A = 4kWまでしかの電力しか扱えません。
パワコン
ノイトリック(Neutrik)のパワコンは小型の舞台照明機器で電源ケーブルの脱着のために採用されていることが多いです。
私は新しい製品である「powerCON TRUE1」の方を愛用していて、通常のパワコンと比べて、延長アダプタの必要なしに延長できることが特徴です。
設営する際に、電源ケーブルを複数持って行くだけで、長さを合わせて自在に延長することが出来るのがとても便利です。
機器側のインレットも存在するために、C型コンセントでは出来なかった機器からのケーブル脱着も可能です。
自分は機器を100V / 200V共用設計にし、コネクタ定格の20A、つまり100V時は最大2kW、200V時は4kWとして設計をすることが多いです。
インダストリアルプラグ(CEE Form)
海外で大型機器によく使用されるコネクタです。
カムロック(Cam-Lok)
大電力を扱うためのコネクタです。スタジオやライブ会場ではよく使用されています。
東映東京撮影所内の盤と、テレビ東京スタジオ内で使用したカムロックC型変換の盤(TELMIC扱い)です。
テレ東ではアース端子を取り出すために用意してもらいました。
画像のカムロックはE-Z1018で、富士電線の「ステージ用2PNCT 70mm^2 (300A)」が使用されているようです。
E1015は150Aまで、E-Z1016/E1016, E-Z1018/E1018はケーブルサイズに応じて400Aまで、電圧は600Vまで使用できます。
スタジオでは単相3線式をそのままカムロックで出しているパターンが多く、ライブ会場などの仮設でも大元はカムロックで引いてくることが多いように見受けられます。
アメリカン電機 - フランジインレット
変わり種の紹介ですが、機器本体側に設置できるフランジインレットがアメリカン電機から発売されています。
通常のコンセントでのケーブルをそのまま機器側で脱着出来るので、これを自作機器に使用するのも便利だと思われます。
保護素子
ヒューズ
整流方式
800V 60A 3相ブリッジ ダイオードモジュール RM30TPM-H
倍電圧整流
リアクトル
PFC
ブリッジ部分の配線に使うバスバー(ブスバー)
大電力を扱うため、銅板を使用して配線を行います。
銅板は硬いので加工が大変です。
規格品の分岐母線銅バー
加工済みの銅バーがあると配線は楽に出来ます。
規格品で以下2社のものが同一サイズです。
※ TCUB-120 は 篠原電機 CUB-120 のトラスコ扱いと思われます。
(見た目は銅の色をしていませんがニッケルメッキされているためです)
電解コンデンサ
動作時に結構な電流が流れるため、IGBTの極力近くに配置する必要があります。
私は 400V 10000μF 程度の大きな電解コンデンサを使うことが多いです。
電解コンデンサの放電
バスに大きな電解コンデンサを配置すると、電源を抜いても電解コンデンサにはかなりの電荷が残ったままになります。
もちろん残った電荷でテスラコイル自体が動作できるほどのエネルギーが蓄えられているため、感電の危険性が高いです。
そのため電解コンデンサには電荷を放電するための抵抗が必要になります。
リレーやコンタクターのB接点を使用し、システムの電源が切れたら抵抗を電解コンデンサに接続する構成にするか、常に抵抗を付けておきます。
なお、抵抗には高電圧がかかるため、データシートで定格電圧を調べておくことは重要です。
定格電圧が足りない場合は直列に複数個接続して電圧を稼ぎましょう。
常に抵抗を付けておく方法
コンデンサの端子に抵抗を常に付けておく場合、電源が供給されている場合も抵抗が無駄な電力を消費します。
つまり、かかっている電圧と抵抗値から抵抗で消費される電流が計算できるため、W数も考慮にいれます。
例えば、400V 10000μFのコンデンサに抵抗を常に付けておくとして、最大の定格で考えると400Vの電圧がかかります。
100kΩの抵抗を付けたとすると、I=V/Rから400/100000=0.004Aの電流が流れると計算できます。
すると抵抗で消費されるW数としては、400 * 0.004 = 1.6W となります。
2W以上の抵抗と考えると、このようなものが使用できると思われます。
常に、1.6Wの電力を消費し、電源が切れたらコンデンサ内部の電荷を消費していく形になります。
しかし、400V 10000μFも容量がある場合、100kΩの抵抗だと約1時間ほど放電に時間がかかります。
もちろん、抵抗値を1/10の10kΩに変更すれば、数分で放電できるようになりますが、その分消費する電力も増えます。
つまり計算上は、16W(ハンダゴテの熱量を想像してください)の電力を消費することになり、それだけの発熱だとメタルクラッド抵抗に放熱板を取り付けないと熱を逃がすのも大変です。
私は、100kΩの抵抗のリード線に丸型圧着端子(R1.25-5等)を圧着して、コンデンサの端子に直接取り付けておくことをよくやります。
電源が切れたときに抵抗をコンデンサに接続する方法
リレーやコンタクターのB接点を使用して、システムの電源が切れたときにコンデンサと抵抗が接続されるような回路にしておきます。
この場合、低めの抵抗値にできるでしょう。
400V 10000μFの場合、2kΩの抵抗を使用すれば、1分以内に放電できるでしょう。
しかし、抵抗にかかる初期電力は、80Wにもなります。
電源が切れた場合にのみ接続されるものなので、コンデンサの電荷が放出されれば、その分電圧が下がるので、ピークが80Wと計算できると思われます。
これを2つ直列にして、100W 2kΩの抵抗とすれば、上記の条件は満たしそうです。
突入電流防止
抵抗+リレー(コンタクター)
抵抗+サイリスタ
白熱電球
電流監視
簡易電力量計を使用する方法
CTでACを見る方法
CTでDCを見る方法(LEM HO xx-S)
ホール素子を使ったものであればDCを観測することが可能です。
個人的に扱いやすいと思うのはLEMのHO xx-Sシリーズです。
共振回路を確認するには?
一時的な計測用途だとピアソン(Pearson Electronics)のCTがよく使われます。