大型CNCフライス盤製作記(1号機)
板材の加工が大変なので大型のCNCフライス盤を作ろうと思います。
完成品の巨大CNCフライス盤を購入しても良いですが、モノ自体が大きいので送料がかかるのと、 設置場所に余裕がないのでCNCフレームを購入して自作しようと思います。
2019/09/29
CNCフレームの注文をします。
AliExpressにて「CNC Frame 9014」と検索し、一番安かったものを注文しました。
ワークサイズが900mm*1400mmであり、確認するかぎり一番大きいCNCフレームキットです。
中国からの船便の送料も合わせて約1200ドルでした。
注文後、「CFR(Cost and Freight)」での取引条件のため、仕向港を指定してほしいとの連絡が来ます。
荷物が船に積み込まれた時点で輸入者に引き渡し完了(それ以降の損傷等は保証されない)、指定仕向港までの運送費用は輸出者が負担するという条件です。
そのため「TYO(東京港)」等を指定して自分で港まで引き取りに行かないといけないようです。
重量が90kgとのことで、引き取りに行くのも結構辛いです。
追加料金を支払えばFedExで家まで送ってくれるとのことなので、素直に300ドルの追加料金を支払うことにしました。
2019/10/18
木箱着弾。
本体フレームの材料と組み立て済みのユニットが入っているようです。
油でベトついているので組立前に拭き掃除しないといけないですね。
2019/10/23
CNC本体を置くための台車を製作します。
パネコートとキャスターで適当に作りました。
2019/10/26
CNCフレームの組立を開始します。
100kgもの重さのCNCフレームを支える足がゴム足4個という貧弱さのため、防振ゴムを買ってきました。
さすがチャイナクオリティというかなんというか・・・ 細かいところを気にしたら負けですね。
切り粉もそのままなのでキレイに拭いていきます。
説明書も何も付属していない上に、Webサイトの画像はアテにならず。
今ある部品を見ながら考えつつ組み立てていきます。
アルミフレームを金具で接続していくことによって大きな加工テーブルを製作します。
これを本体のフレームに取り付ければCNCの完成・・・と、ここで問題発生です。
アルミフレームの誤差がプラス方向にあるためか、フレームの幅が広くなってしまい端の方のネジ穴が合いません。
仕方ないのでラッシングベルトでアルミフレームが斜めになるほど締め付けて、プラスチックハンマーで叩いていきなんとかネジを入れていきます。
あまりにもネジ穴が合わないため、プラスチックハンマーが割れるほどの強さで打ち付けて組み上がったという感じです。
もうネジは外すことは出来ない気がします。
中国人はこれをどうやって組み立てているのか?疑問です。
小型のCNCフレームの設計を誤差を配慮せずにそのまま引き伸ばしたかのような印象を受けます。
まぁ、価格なりといったところでしょうか。
2019/10/27
主軸のスピンドルモーターや、ステッピングモーターなどが届きました。
110V 1.5KW 80mm 400Hz駆動 空冷スピンドルモーターです。
ER16コレットのものを買いました。
VFD(Variable Frequency Drive)インバータもセットで購入してあります。
Amazonで購入したのですが、その後、商品ページが消えてしまいました。
次回購入の際は、eBayやAliExpressで調達になるかと思います。
ステッピングモーターはAmazonでも売られている「23HS2430B」です。
定格電流は3Aで、ステップ角度は1.8°とのことです。
つまり、1回転(360°)は、200ステップとなりますね。
8mm-8mm のカップリングも付属していなかったため調達しました。
カップリングが合うかどうか、ステッピングモーターを1ヶ所組み付けてみます。
スムーズに回転するので大丈夫そうです。
ステッピングモータードライバーはeBay等で安く売られている「TB6600 Stepper Motor Driver」を使用します。
最大32のマイクロステップが出来るので、1回転200ステップのところ、200 * 32 = 6400 のステップ数にすることができます。
ここまでのステップ数があるとスムーズな加減速が可能になるので、32マイクロステップで使いたいところですね。
ちなみに端子台への接続はフェルール端子を使いましょう。
2019/10/31
フレームが届いたときからZ軸の動きがスムーズでは無いと思っていたのですが、よく確認したところベアリングが曲がっていました。
ここの部分は組み立て済みの状態で届いたものなので、組み上げ時の傷ではないか?と思います。
そこでベアリングの交換なのですが、付いているものがフランジ付きのテーパー仕様ベアリングで、少なくとも日本では存在しない仕様です。
軸径:12mm
外形:28mm
(テーパーで実測 27.9~28.1mm 程度の変化。測定誤差なだけかもしれない)
フランジ径:30mm
ベアリング厚:8mm
フランジ部分厚:2mm
テーパー部分厚:6mm
ノギスで計測した結果です。Webで調べると「F6001ZZ」が一番近い大きさかな?と思います。
本体に刻印がないので、本当にこの型番かは確定しないのですが・・・。
ともかく、日本で手に入るもので代用できそうなベアリングは「6001ZZNR」なので、それを入手しました。
交換したベアリングを組み付けます。
ナイロンナットが付属していたのですが、錆びていたので、薄型のUナットに変更しています。
2019/12/18
VFDインバータからの配線を主軸モーターまで引き回すことになるのですが、最低でも3m程度の長さになるので、シールド付きの配線にしたいと思います。
長岡特殊電線のCHC300が、高電圧を使える上にシールドされていて良い感じです。
EM-CHC300 VCTF-SB 3*1.25sq を準備しました。
主軸モーターのコネクタ配線をします。
アースが本体と接続されているとWebで見かけたのですが導通がありません。
モーターを分解したところ、なんと配線されていませんでした。
そのため自分でアースの配線を追加しました。
配線は以下のようになりました。
相 | 内部ケーブル色 | コネクタピン番号 | CHC300ケーブル |
---|---|---|---|
U | 赤 | 3 | 赤 |
V | 黄 | 2 | 白 |
W | 青 | 1 | 黒 |
- | - | 4 | シールド |
使用しているVFDインバータはHyria Electrical Co.,Ltd / 玉环环洋电器有限公司「HY01D511B」です。
入力が110V仕様で、出回っている数が少ないのかWebサイトに情報が無いようです。
モーター共に200V仕様を購入して、倍電圧整流で電源入れるのが良かったかもしれません。
とりあえず以下の情報を元に、動かしてみます。
最低限、モーターの周波数400Hzを設定すれば動作します。
- 英語マニュアルのミラー(PDF):inverter.pdf
- https://www.youtube.com/watch?v=Tdn_KANxff4
- https://bbs.avalontech.jp/t/vfd/343
また、主軸スピンドルの回転数を計測しておきます。
最高周波数の400Hzのときに、約24000RPMとなるようです。
入力周波数の60倍のRPM数になると考えておけばよさそうです。
メモ:VFDインバータの設定変更方法
起動時「| ̄00.00」表記は現在の出力周波数を表す(00.00Hz)。
設定を変更するにはその状態から、「PRGM」ボタンを押してプログラムモードにする。
「Pd000」という表記に変わるので、上下ボタンとSHIFTボタンを押して設定対象の数値に変更する。
「SET」ボタンを押すと現在の設定内容が表示されるので、上下ボタンで値を変更して「SET」で確定。
「End」と表示されて設定内容が保存される。「REV」ボタンでプログラムモードから抜ける。
なお、モーターの最高周波数をデフォルトの50Hzから400Hzに変更するには、PD003・PD004・PD005・PD072を400に設定します。
詳細は PDFマニュアル の19ページファンクションリストを参照。
2019/12/19
CNCの制御インターフェースには grbl を使用しようと思います。
ArduinoをCNCとのインターフェースにすることが出来るオープンソースのCNCコントローラーです。
自作CNCだと、Mach3/4や、USBCNC、LinuxCNCが使用されるのが一般的のようですが、 インターフェースが高価であったりパラレルポート等のレガシーインターフェースを要求されてしまいます。
そのため、今回は grbl と bCNC というオープンソースの G-code Sender / CAM を合わせて使う感じにします。
grblの接続方法はこちらを参考にします。
https://github.com/gnea/grbl/wiki/Connecting-Grbl
メモ:grblのパラメータを設定する
設定 | 初期値 | 設定値 | 概要 |
---|---|---|---|
$0 | 10 | 10 | ステップパルス(usec) |
$1 | 25 | 25 | ステップアイドル時間(msec) |
$2 | 0 | 0 | ステップ信号出力ピン反転指定マスク |
$3 | 0 | 1 | 方向制御出力ピン反転指定マスク |
$4 | 0 | 0 | ステップイネーブルピン入力反転 |
$5 | 0 | 1 | リミットピン入力反転 |
$6 | 0 | 0 | プローブピン入力反転 |
$10 | 1 | 1 | ステータスレポート指定マスク |
$11 | 0.010 | 0.010 | ジャンクション偏差(mm) |
$12 | 0.002 | 0.002 | 円弧近似公差(mm) |
$13 | 0 | 0 | インチ単位系有効 |
$20 | 0 | 1 | ソフトリミット有効 |
$21 | 0 | 1 | ハードリミット入力有効 |
$22 | 0 | 1 | ホーミング動作有効 |
$23 | 0 | 3 | ホーミング動作方向指定マスク |
$24 | 25.000 | 25.000 | ホーミング動作フィード(mm / min) |
$25 | 500.000 | 1500.000 | ホーミング動作シーク(mm / min) |
$26 | 250 | 250 | ホーミング動作デバウンス(msec) |
$27 | 1.000 | 10.000 | ホーミング動作プルオフ距離(mm) |
$30 | 1000 | 24000 | スピンドル回転速度最大値(RPM) |
$31 | 0 | 0 | スピンドル回転速度最小値(RPM) |
$32 | 0 | 0 | レーザーモード有効 |
$100 | 250.000 | 640.000 | X軸(ステップ / mm) |
$101 | 250.000 | 640.000 | Y軸(ステップ / mm) |
$102 | 250.000 | 1280.000 | Z軸(ステップ / mm) |
$110 | 500.000 | 3000.000 | X軸最大レート(mm / min) |
$111 | 500.000 | 3000.000 | Y軸最大レート(mm / min) |
$112 | 500.000 | 500.000 | Z軸最大レート(mm / min) |
$120 | 10.000 | 20.000 | X軸加減速度(mm / sec^2) |
$121 | 10.000 | 20.000 | Y軸加減速度(mm / sec^2) |
$122 | 10.000 | 10.000 | Z軸加減速度(mm / sec^2) |
$130 | 200.000 | 1360.000 | X軸最大移動距離(mm) |
$131 | 200.000 | 890.000 | Y軸最大移動距離(mm) |
$132 | 200.000 | 93.000 | Z軸最大移動距離(mm) |
各パラメータに関しては、公式サイトに説明があります。
他参考サイト
ホーミング動作(原点出し)を設定する場合は、リミットスイッチの配線を行ってからにしてください。
メモ:grblからVFDインバータのスピンドルの回転を制御する
使用しているVFDインバータは外部からの電圧によって動作を制御することが出来ます。
設定 | 初期値 | 設定値 | 概要 |
---|---|---|---|
PD001 | 0 | 1 | インバータを外部端子から制御する |
PD044 | 02 | 01 | FOR端子をRUN入力に変更する |
PD045 | 03 | 05 | REV端子を回転方向入力に変更する |
メモ:grblからVFDインバータのスピンドル速度を制御する
使用しているVFDインバータは外部からの電圧によって周波数設定をすることが可能です。
grblからは5VのPWM信号を出すことが出来るので、それを元に速度を制御してみます。
このVFDインバータには設定項目内にフィルター(PD071)が存在するため、PWM信号をそのまま突っ込んでも大丈夫です。
参考:https://github.com/vlachoudis/bCNC/issues/1196
PD070を変更することにより、電圧基準を電流基準に変更することもできます。
具体的にはgrblを書き込んだArduinoのデジタル11番ピンからの出力にフォトカプラを接続し、 その出力をVFDインバータに接続します。
設定 | 初期値 | 設定値 | 概要 |
---|---|---|---|
PD002 | 0 | 1 | 周波数設定を外部端子から制御する |
PD070 | 0 | 1 | 5V入力時に周波数最大にする |
参考リンク